サンライトノート

主に映画や小説、漫画等の感想を一定量吐き出したい欲を満たすためのブログです。本が出るとかなったら告知もするかもしれません。

『OLD』(M・ナイト・シャマラン/2021)

シャマラン監督の最新作『OLD』の感想記事。当然ネタバレを含みます。

 

youtu.be

仲良し姉弟と優しい両親という理想的な家庭に見えて両親の仲が冷え切っている主人公ファミリー。両親は離婚を考えており、子供たちに切り出す前の最後の思い出にと家族旅行に出かけます。

ホテルの支配人から案内されたビーチへ他の何組かの客と共に赴き、最初はごく普通に海水浴を楽しんでいたもののすぐこのビーチの異常さに気づくことに。

それは、「このビーチでは人体の時間が1年/30分の速度で進む」というもの。

1、2時間で年単位の成長を遂げる子供たちに始まり、すでに成長を終えている大人にも老化や持病の急激な進行という形で変化が現れます。

老化の力の発生源と思しき岩に退路を阻まれ、脱出不可能のまま彼らは老いて死んでしまうのか……というサスペンス。

・わかりやすいエンタメ作品

個人的にはシャマラン監督にそこまでいいイメージがなく、予告に惹かれはしたもののあまり期待はしてなかったんですが、何か80点くらいの映画というか、よくも悪くもストレートにエンタメな作品だなと。

まず、超スピードで老化し、子供たちも一日あれば中年に、さらに半日経てば老衰死確実というわかりやすくかつ斬新な危機設定。

怪物に襲われるとか災害に見舞われるみたいな物理的脅威ではなく、ビーチから出られないキャラクターがそこにいるまま、精神の追いつかない速度で変化を遂げていく様を眺めることができます。

特に変化が顕著なのはやはり子供たちで、主人公一家の男児とよその家の娘がテントに入っているうちに思春期を迎え、性知識もないまま「子作り」に及んだ結果妊娠した状態で両親の前に現れ、時の加速は胎児にも及ぶため数分で出産という恐ろしい状況はこの映画じゃなければ見られないでしょう。

パニックから殺し合いになったり、強引に脱出を図ったキャラクターが死亡したり、無関係に思われる自分たちに共通点を発見、このビーチへと案内したホテル側の意図を考察したりと、とにかく見る側を飽きさせません。

絶体絶命の状況下で離婚するはずだった夫婦が自分たちの絆を再確認する、大人の体にされてしまった子供たちが、大人の頭脳になったことで脱出手段を探るなどエンタメ的な軸もはっきりしています。

ラストもハッピーエンドというには人が死にすぎだけど一定の救いがあり、後味の悪さはありません。

・「そこそこ止まり」感

だから決してつまないということはなくそこそこに楽しめる作品だと思うんですけど、難点としては設定以上の刺激がないことかな?

時間が速くなるビーチという状況設定は魅力的なんですけど、そこから飛躍できてないというか、劇中で発生する出来事が設定を聞いたときに想像する域を出てないんですよね。もっとめちゃくちゃヤバい転がし方をしてほしかった。

このビーチの真相もまあそうって感じで、成立はしてるし文句があるわけじゃないけど、全体に小さくまとまったな、という印象。

良くも悪くも普通、大人しい感じの映画で何だかもったいなかったかな。