『アクアマン』(ジェームズ・ワン/2019年)感想
映画『アクアマン』日本版本予告【HD】2019年2月8日(金)公開
滅亡したと思いきや海中に適応して繁栄していたアトランティスの王女と地上の灯台守の男との間に生まれた男・アーサーことアクアマンが主人公。
『ジャスティス・リーグ』でバットマン達と共闘した後、潜水艦を襲う海賊をやっつけたりして海のヒーローとして噂になっていた彼ですが、そこに、海の覇権を握り地上制服も目論む弟・オームの魔の手が伸びてきて、彼を打倒してアトランティスの王になって欲しいと望まれたアーサーは……みたいなあらすじ。
この映画で特筆すべきは映像面での楽しさ。
アクションとかCGが凄いのはアメコミヒーロー映画なら当たり前なんでしょうけど、この映画は画面がものすごく華やかです。
これは個人的な印象なんですけど、MARVELにせよDCにせよアメコミヒーロー映画ってなんか画面が暗い(ことが多い)気がするんですよね。話の内容とはまた別に。
そこへいくとこの映画は、伝説の武器トライデントを探す過程で訪れたシチリアの港町から海中世界まで、やたら色彩が明るい場面が多かったように思います。
また、戦闘では妙に動きがアニメ的なコミカルさがあったり海中では魚人からサメに海竜に喋る甲殻類に多種多様な海洋生物が入り乱れたりでなんとなくディズニー映画みたいな雰囲気もあります。
Twitterでもけっこう目にした感想で実際に見て自分でも笑ったんですけど、この映画は絵面が硬直しかけると即座に爆発が起こって展開が加速するので目が飽きません。
今まで見たアメコミヒーロー映画の中でも「映像の楽しさ」は一番だと思いました。
一方で難点もあって、この映画はテーマがおざなりじゃないなかなと。
当初は王座につくことを拒んでいたアーサーが弟に破れ、成長し、王としての使命に目覚め、真の王となる王道のストーリーなんですけど、そのあたりがふわっとしているっていうか、アーサーがなぜ「真の王」足り得るのかみたいなのが見ていて感じられませんでした。
真のアトランティス王の証であるトライデントを引き抜けるか、みたいな試練があって、アーサーは抜くことに成功するんですけど、「なんで抜けたのか」もよくわからない。
作中で言うところの王とはどういう者が相応しくてアーサーなら何故なれるのか、というのがはっきり示されてないので、彼が王になることに特に乗れないんですよね。
同じく「王」がテーマのヒーロー映画、『ブラックパンサー』では主人公のチャラがワガンダ国王としては立派ながらも世界に対しては排他的で、その歪みに父親を奪われた復讐者・キルモンガーに王位を追われる……と明確な問題提起を持ったストーリーになっていて、だからキルモンガーを倒した後、もうそういった歪みを生まないよう、世界の平和のためにも尽くす新たな方針を打ち出すラストにカタルシスがありました。
作中で「王は国民のために戦うだけ。みんなのために戦うヒーローになって」と望まれるシーンがあるんですけど、それを具体的な形で示している『ブラックパンサー』に比べるとやっぱりこの映画は物足りないなと。
『ブラックパンサー』は政治性が鼻につくと言われるしそこまでテーマを押し出す必要はないのかも知れないけど、作中のロジックがちゃんとわからないと映像面で凄くてもやっぱりそのカタルシスに素直に乗れないから、そこはかっちりしてほしかった。